Don’t think. Feel.(考えるな、感じろ。)
ブルース・リーが映画「燃えよドラゴン」で弟子に放った一言です。
このあと彼は
それは月を指差すようなものだ。指に気をとられるんじゃない。そうしないと栄光はつかめないぞ
と言葉を続けています。
中学時代初めて耳にした時、前者はともかく後者は意味がわかりませんでした。
しかし先日、ロシア武術システマの創始者の長子ダニール・リャブコ氏のワークショップに参加し、理解できなかったその言葉の意図に少し近づけたように思えます。
ダニール氏のワークショップでの体験をもとに、この二つの言葉をフィードバックループという観点で考えてみます。
型を持たない武術 システマ
システマは他の多くの武術とは違い、型を持っていません。
技の名前などはなく、打撃は「ストライク」(ロシア語ударの英訳)
呼吸法は「ブリージング」(ロシア語дыханиеの英訳)
型を用意して「こう来たらこうする」という予測をして動くのではなく、何が起こっているかを感じ、柔軟に動く。
ヤングマスター、ダニール・リャブコ氏のワークショップでは、参加者同士でペアを組んで、お互いに相手の体勢を崩そうとするワークを何度か行いました。
参加者の動きを見たダニール氏のアドバイスは、
相手に緊張を与える必要はない
というものでした。
「相手を投げたい倒したい、など自分がしたい事に意識がいきすぎ。もっと相手が何をしているかを感じよう」
これは上の言葉に続いたダニール氏のアドバイスです。
自分に危害を加えようとしている人や、自分から何かを奪おうとしている人と対峙した時、私たちは緊張を覚えます。
システマ的には緊張をもらう、緊張を与えるという言い方をします。
押されたら押し返したくなるように、緊張をもらったら抵抗したり逃げたくなる。
武術においてもパワーとスピードで勝つというよりは、相手にわからないようにやりたい。
相手を倒そう
こう投げよう
と考えるとその緊張が相手に伝わり対処される上、自分も相手の動きを感じることが十分に出来ない。
最初に紹介したブルース・リーの言葉でいうと、月ではなく指に気をとられている状態。
こうしたいからこうする、こう来たらこうするという予め決めた事をするのではなく、相手の動きを感じ、それに応じて柔軟に動く。
これに加えシステマは軍隊格闘技の側面も持っています。
そのニュアンスでいうと、感じとる対象は対峙する相手の動きに限らず、今自分の周りで何が起こっているかもその対象となります。
これを拡大すると、感じとる対象は現実そのもののフィードバックともいえます。
人を含んだ「現実」からのフィードバックを感じる
例えば部下や後輩に仕事を教える時。
相手の動きや、周りの環境が与えてくれるフィードバックを無視して
「この教え方、この仕事のやり方が良いに決まっている。なぜなら自分には有効だったから」
と教え方を調整しないのは、同じことを繰り返す事になるだけではなく、相手に緊張を与える行為ともなります。
緊張をもらうと、抵抗したり逃げたくなる。
抵抗を受けないように、相手が逃げたくなったりしないようにしながら動いてもらう。
一度のフィードバックループでここまで整うとは限りませんし、次のフィードバックを受けての調整も望む結果に繋がらないかも知れない。
しかし今何が起こっているか、相手が何をしているかを都度しっかり感じてそれに応じて調整する限り、同じ事は二度と繰り返しません。
マクロでもミクロでも、フィードバックを無視して押し付けると抵抗が返ってくる
マクロでもミクロでも「緊張を押し付けると抵抗が返ってくる」動きは見られます。
マクロでいうと、最近は国内ですとジャニーズやビックモーターなどの「帝国」に対しての、国際情勢で言うと米中露三大国のハードパワーを使った振る舞いに対しての抵抗、人間の活動の影響による気候の変動など。
ミクロでいうと、ひとりの人間の中でも「自分の感情」というフィードバックがありこれを無視して緊張を押し付けると抵抗が返ってきます。
ダニール氏のワークショップを通して、
Don’t think. Feel.
とは
「今何が起こっているか」「相手(観察対象)が何をしているか」を感じろ。
という一旦の解釈をしました。
ブルース・リーが草葉の陰から現れて「全然違うよ」とおっしゃったとしても、それもフィードバックとして受けとり解釈を修正していくだけです。
感想や掘り下げて欲しいところ等あればお気軽にコメントやお問い合わせください、それでは今日はこれにて!
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