「文化の継承」というフィールドにおける、日本および日本的価値観の役割

文化

11月23日の祭日、何年かぶりに伊勢神宮に参拝してきました。

11月23日は、戦後は勤労感謝の日という名前もついていますが、もともとは一年の収穫に感謝をし祝う祭・新嘗祭を行う祭日。

外宮・内宮での神事だけでなく、おかげ横丁でも収穫にちなみ新酒を振る舞う催し物が開かれており、多くの人で賑わっていました。

伊勢神宮の史実的な創祀(祀ることを始めた)年代は特定されておらず、紀元前から7世紀まで説によって異なりますが、どんなに少なく見積もっても1300年以上は遡れる歴史を持っています。

紀元690年に始まる式年遷宮を象徴とする連綿と続く制度や、古代日本の倉庫そのままといわれる内宮の建築様式。

英語学者であり哲学博士でもあった故渡辺昇一氏いわくこれは、

アテネのパルテノン神殿で、今も神官がギリシャ神話にまつわる儀式を行っているようなもの

日本にいるとあまり意識することがありませんが、ここまでの「人の意思やその結晶を受け継ぐ意識の強さ」は他の文化圏にはあまり見られません。(「創造主の意思」はまた別ですが)

前回の記事で取り上げた、言語・文化の存続が危機的状況にある満洲族のドキュメンタリー映画「天空のサマン」。

文化や価値観は自動的に残るものではない。大事にする人々がいてこそ受け継がれる
日本人の母をもち、清朝最後の皇帝・宣統帝溥儀に連なる満洲族の父をもつ、金大偉監督のドキュメンタリー映画「天空のサマン」を鑑賞して来ました。「サマン」とは英語のshaman(シャーマン)の語源となった満洲語です。満洲族とは、現在の...

監督は日本人の母をもち、清朝最後の皇帝・宣統帝溥儀に連なる満洲族の父を持つ金大偉監督。

これを鑑賞した数日後に新嘗祭の伊勢神宮に参ったので、感じたこと・新しく得た視点はかなり多かったです。

ここでただ

「日本SUGEEE」

となるだけでは、思考停止して部屋で自分を慰めてるのと一緒。

なので部屋の外に出て、地球上の「文化の継承」というフィールドにおいて日本および日本的価値観が今後持つ意味・役割を、伊勢神宮参拝で感じたことと金大偉監督の言葉から考えてみます。

まずは価値観について。

国家でも会社でも個人でも、みなそれぞれ何かしらの価値観を持っている

「日本人らしさ」という言葉があります。

肯定的な意味合いでは

  • 礼儀正しい
  • 和を重んじる
  • 伝統を大事にする

などといった含みで、否定的な意味合いでは

  • 人の目を気にする
  • 自分の意見を言わない
  • 変化に対する抵抗が強い

といったニュアンスで用いられます。

この「〇〇人らしさ」とは、他と比較したときに見られるその人たちの一般的な傾向であり、彼らの価値観を反映したものです。

米国人らしさやフランス人らしさなど、それが正しい認識かはともかくとして、国に応じて何かしらイメージはあるかと思います。

そして彼らも日本人とは異なる何かしらの価値観を持っている。

この「〇〇らしさ」という捉え方は、国家に限らずもっと小規模な会社のような集団、年代や世代という集団、個人に対しても適用されることがあります。

例えば証券会社に勤める方のことを証券マンといいますが、その中でも野村證券に勤める証券マンには、その労働環境の過酷さから戦闘民族・野村マンという俗称がついています。

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X世代、ミレニアル世代、Z世代など世代ごとにも特徴と見られるものがあり、例えば1981〜1996年生まれのミレニアル世代は

  • 共感を大切にし、仲間意識が強い
  • 多様性・個性を重要視する
  • 働き方へのこだわりがある

といった傾向があるとされています。

そして個人にも、人から見た「〇〇さんらしさ」というものがあり、上述の集団と同じように何かしらの価値観を持っています。

ただしこれは集団の「らしさ」と比べ、潜在的にはかなりの柔軟性・可塑性を持っていますが。

それぞれの価値観が役割を持っている

集団や個人が持つそれぞれの価値観が、さらに大きい集団の中で何らかの役割を持っています。

例えば10代20代の若い世代という集団は、さらに大きい「社会」という集団の中で、既存の枠組みとは違う新しい視点を提供する。

30代40代の中堅どころは上の世代と下の世代の橋渡しをしつつ、20代までに培った経験と知恵で今後の社会インフラの基盤となり得る種を植えていく。

50代60代は現役を続けながらも、人によっては第一線からは退いたり後進の指導への比重が大きくなる。

70代以上となると、経験と知恵の継承という役割が大きくなる。

人生100年時代にあって、上記の70代が90代になったりするかも知れませんが、一例として年代ごとの役割を挙げました。

個人としても、イーロンマスク氏や堀江貴文氏のような、伝統などの既存の文脈は気にせず新しい事を生み出す役割を持つ人もいれば

特攻隊の生き残りでもあり国内外で茶道を通して平和の大切さを説く、今年100歳を迎えた千玄室宗匠のような方もいる。

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集団や個人の持つ価値観が何かしらの行動を生み、その行動がより大きい集団の中で何らかの役割を持つ。

それぞれの集団、個人が持つ役割は大もとを辿ると価値観からくるものです。

日本はどういう国で、どういう価値観を持っているか

話を日本に戻します。

日本の皇室は、初代神武天皇が即位されてから公称2600年の歴史を持ちます。

今上陛下は126代目の天皇ですが、「初期天皇の何代目からが実在した天皇か」が議論されるほど古くから続く世界最古のロイヤルファミリーです。

その天皇家の祖先神かつ日本の総氏神である天照大神を祀るのが伊勢神宮。

2013年に話題になった20年に一度行われる式年遷宮は、冒頭でも述べた通り紀元690年から1300年間続いています。

皇室も式年遷宮も何事もなく続いてきた訳ではなく、存続の危機は何度かありました。

皇室でいうと、17世紀にその存続が危ぶまれる状況があり、危機感を覚えた新井白石や様々な人々の尽力で、宮家(スペア)として閑院宮を創設(1710年)。

創設から約70年後その危惧が現実のものとなり、第118代 後桃園天皇(1758-1779)が崩御した時には、その年誕生した皇女が一人いるだけでした。

閑院宮家の祐宮師仁王が光格天皇として即位し、そこから一直線に今上陛下に至ります。

式年遷宮に関しても、応仁の乱前後から戦国時代にかけての動乱で約120年にわたる中断を経て、天下人となった織田信長や豊臣秀吉の大規模寄進により1585年に内宮・外宮両宮の式年遷宮が復活しました。

皇室、遷宮いずれの例も「人の意思やその結晶を受け継ぐことを重要視する価値観」から生まれた行動です。

外国文化にも向けられる「日本的価値観」

この姿勢は外国から取り入れたもの、文化にも向けられます。

例えば古都奈良の正倉院が所蔵する美術工芸品の数々。

正倉院はシルクロードの東の終着駅と言われるほど、唐やペルシャに由来する外国産の宝物が多いイメージですが、近年の調査研究によると宝物の多くは異国風を取り入れた日本産で、外国産のものはおよそ5%しかないといいます。

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古いものでは8世紀にも遡れる異国風の宝物が、現代に至るまであれだけ良い状態で保存され続けている。

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皇室や遷宮の例と同じく、これらの宝物も「受け継いだものを大事にする」という多くの人の想いの結晶として遺されている、遺されていくものです。

満洲族の血をひく金大偉監督の話を聞いて感じた、日本的価値観の役割

冒頭で書いた、文化的に存続の危機にある満洲族を追ったドキュメンタリー映画「天空のサマン」を撮った金大偉監督。

かつてあれほど巨大な大清帝国を統治した満洲族の文化と言語が、現在どれほど深刻な状況にあるかは前回の記事で書いた通りです。

ミュージシャンでもある金監督いわく、

満洲語をネイティブで話せる人も満洲語の伝統的な歌を歌える人も、おそらくいずれいなくなる。

しかし(日本を拠点に活動する)私が満洲語の歌を現代風にアレンジして残していく。

満洲族の文化は日本で残る。

中国本土では政府の許可が下りず、映画の公開も音楽CDの販売も出来ない状況。(特に今は)

元の土地ではなくそこから離れた日本という地で、形を変容させながらも文化が受け継がれる。

古代においては中国大陸から、明治以降はヨーロッパから、戦後は主に米国から有形無形問わず様々な文化を輸入した日本。

文化や伝統も、昔々に固まりきった固体ではなく今その地で生きている人々が紡いでいく動的なものなので、必ずしも輸入したもの・文化がそのまま残る訳ではない。

しかしそれでも、変化のスピードが加速するこれからの時代「人の意思やその結晶を大事にする」日本的価値観は、必要に応じてどんどん改革をしていく価値観と同様に地球上で重要な役割を持つ。

集団の価値観も個人の価値観も、真空に存在している訳ではない。

さらに大きい集団の中で、価値観に応じて発揮できる役割があるというお話でした。

感想やご質問等あればお気軽にコメントやお問い合わせください、それでは!

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