歌舞伎の世界を舞台にした映画『国宝』の中に、こんなシーンがあります。
ある歌舞伎役者に対して、ある人物がこう言います。
「あなたがここまでたどり着くために、どれだけの人を犠牲にしたと思ってる?」
重い言葉に聞こえます。
歌舞伎役者に限らず
俳優、スポーツ選手、実業家などの第一線で活躍する人たち。
わかりやすく脚光を浴びている彼らは、私たちが想像する通り、人だけではなく多くのものを犠牲にしています。
プライバシー、家族との時間、食生活の自由…
でもここで重要なのは
実はどんな凡庸に見える人でも、どんなにパッとしない人でも、何かを犠牲にして何かを手に入れているということです。
しかし私たちの多くは、自分が何を犠牲にしているのか気づいていません。
いや場合によっては、気づかないふりをしていると言ったほうが正確かもしれません。
今回は、「なんとなく」で犠牲にしているものが積み重なった時のインパクトについて見てみようと思います。
通勤の1時間が10年積み重なった時のデカさ
身近な例を挙げてみます。
例えば、通勤時間が片道30分、往復で1時間あるとします。
もしその時間を電車通勤するとしたら、あなたは何をしますか。
いま実際に電車通勤をしているのであれば、電車内では何をしている人が多く見えるでしょうか。
Instagramを開いたりゲームをして、なんとなく時間を潰している。
そんな人が多いかもしれません。
その人たちは、その時間で何を犠牲にしているのか。
1日1時間の通勤を10年間続けると、累計で約2500時間になります。
2500時間、ひとつのことにエネルギーを投入したら何ができるでしょうか。
語学なら、少なくとも2つの言語を読んだり聴いたり話したりできるようになっています。
楽器の演奏であれば、お金をもらって人前で演奏できるレベルになっています。
通勤時間をInstagramやゲームに使う人は、そうした未来を犠牲にして「目先の刺激や興奮」を手に入れていると言うこともできます。

なんとなく毎日繰り返していることほど、その犠牲に気づきにくい
この事実から得られる大きなヒントがあります。
それは
「惰性でやっていることほど、何を犠牲にしているかに気づきにくい」
ということです。
例えば今の仕事を辞めて起業するとなったら
よほどぶっ飛んだ人でもない限り、安全安心を犠牲にすることに嫌でも自覚的になります。
でもそういった大きな決断ではなく、惰性で続けていること。
なんとなく毎日繰り返していること。
実はそっちも、積み重なった時のインパクトは同じくらい大きい。
起業や転職、または結婚のような1回の大きな決断だけではなく、毎日の小さな選択の積み重ねも同じくらい人生に影響を与えます。
例えば身体の健康でいうと
お昼に毎日カップラーメンを食べる人は、20年30年経ったらどういう身体になるのか。
階段が目の前に現れた時に、毎回一段飛ばしで上がる人と、1フロア移動するだけでも毎回エレベーターを使っている人とでは
20年経ったら、どれくらいの差ができるでしょうか。
身体の健康は心の健康にも深く影響を与えるので、その差は肉体面にはとどまりません。
犠牲だけではなく、「なんとなく」行動のメリットにも目を向ける
いま自分が犠牲にしているものを認識することで、明日からの選択が変わる。
しかし犠牲にしているものに目を向けるだけでは、まだ心はついて来てくれません。
重要なポイントとして、何かメリットがあるからその「なんとなく」の行動をとっているという事実があります。
そこもカバーしたアプローチとして、こういったものがあります。
まずあなたが毎日やっていて、「なんとなくこれ良くないな」とか「なんとなくこれ無駄だな」と思うことを1つ挙げ、そのメリットをリストアップします。
例えば
「毎日帰宅後、好きなYoutuberの動画を観て1時間以上過ごしている」
とします。
好きなYoutuberの動画を毎日観るのは
- 落ち込んでいる時に元気になりたかったり
- 寂しくなった時に気持ちを紛らわしたかったり
- 誰かに共感したかったり(して欲しかったり)
するからかも知れません。
そのメリットを担保する形での代替案でないと、気合で新しいことを始めても逆戻りする可能性が高くなります。
このYoutube視聴の例でいえば
要は、心のつながりが欲しいということなので、そこを担保する手段を考えます。
何かのスキルを習得するなら、一緒に切磋琢磨できる仲間がいるコミュニティに所属して始めてみる。
語学を習得したいなら、外国人が多いシェアハウスに引っ越してみる。
といった具合です。
その上で、今の「なんとなく」行動を10年続けたら、どんな可能性をどれだけ犠牲にすることになるかを考えてみる。
「毎日帰宅後、好きなYoutuberの動画を観て1時間以上過ごしている」
これを10年続けて犠牲になるものは
- 3500時間以上
- 特定分野の専門家になれる時間
- 副業を軌道に乗せて独立できるだけの準備時間
そう考えると、「なんとなく」の重みが変わってくるかもしれません。
脚光を浴びる人たちの犠牲は見えやすい。
でも私たちの日常の中にある犠牲は見えにくい。
だからこそ、意識的に光を当てる必要があります。
今日が10年後のあなたを創る1日目だとしたら
毎日の「なんとなく」を深掘りしてより良いものに置き換えることで
過去の延長から大きく外れる一歩を踏み出せる、というお話でした。
感想やご質問、掘り下げてほしいところ等あればお気軽にコメントやDMください。それでは!
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