No Thinking No Human No Action No Life

歴史がわからなければ今がわからない。今がわからなければ未来がわからない

言語

言語なくして思考なし(1) 言語は話す人の見る世界を映す鏡

投稿日:2018年2月16日 更新日:

 

この記事ではタイトルの通り、言語のもつ鏡としての側面についてお話します。

今回と次回の記事をふまえて外国語学習に取りくむと、それは同時に異文化学習にもなり

日本語と日本人についても今までと違った見方ができます。

 

さて鏡とは、話者の見る世界を映す鏡です。

ややこしい表現しちゃいましたがとりあえず読み進めてみてください。

 

自然の境界線

 

これを見てわかる通り、イヌとネコは目に見えて違います。

英語だろうが中国語だろうがアラビア語だろうが、イヌとネコはそれぞれ対応する単語(英dog, catなど)をもち、分類されています。

イヌとネコの間には、いわば自然が境界線を引いている。

 

同じように全人類にとって空は青く、木々は緑に「見える」のが当然…と思ったら大間違いです。

 

 

人工の境界線

 

古代ギリシャの詩人でホメロスという人がいます。

彼の詩的表現は五感に強く訴えるものが非常に多いのですが、色の表現がちょっとおかしい。

 

青いはずの空は鉄色だったり銅色だったり

19世紀のイギリスの論文「ホメロス研究」によると、青を意味すると考えられる単語がまったく見当たらない。

それに加えて

 

羊はすみれ色ハチミツは緑海はぶどう酒色

 

他に唯一ぶどう酒色とされたものは…です。

そして黒と白を意味する単語が、他のあらゆる色より圧倒的に多く使われている。

 

彼は盲目もしくは色弱だったのではという説も出ましたが、

そうだとしたら他のギリシャ人はこの表現に違和感を覚えなかったのか?

という疑問が残ります。

 

 

古代ギリシャ人丸ごと色弱説

 

そこで出たのが古代ギリシャ人丸ごと色弱説

現代人(19世紀人)からすると詩的表現として片付けるにはアクロバティック過ぎるからです。

確かに映像化はしたくない。笑

 

結論からいうとこれは誤りでした。

当時は生まれた後に得た形質(獲得形質)は遺伝すると信じられていたので

時を経るうちに色覚が変化していったのだろうという推論でした。

が進化は自然選択×突然変異の結果であり、

数千年程度で集団の色覚が変わることはありえないとしてこの説は一蹴。

 

ちなみに「獲得形質は遺伝しない」には若干の例外があることが現在わかっており、

分子遺伝学では再びひとつのテーマになっています。

 

 

色の名前にまつわるある法則

 

話を戻すとホメロスの作品の中では珍しく、「赤」を意味する語は赤いものにしか用いられていません。

血、ワイン、銅などです。

19世紀、いわゆる「未開」の人々の中に黒・白・赤しか色の単語をもたない部族がおり、彼らは

 

明るい色は全部「白」

暗い色は全部「黒」

赤みがかった色合いは全部「赤」

 

と呼んでいました。

 

様々な色の毛糸の束を見せたところ、青だろうが緑だろうが紫だろうが見分け自体はしっかりついているもよう。

しかし彼らにとっては青も緑も紫もすべて「黒」です。

つまりこの部族は世界の色を“暗いか明るいか”で見ている。

 

研究者が数十の言語を対象に調査したところ。

 

最初は黒と白しか色の名前がなく、次に名前の付く色は必ず

 

という原則がすべての言語に見られました。

 

 

同じものを見てるのに?

 

ホメロスの奇妙な表現が、対象の色そのものではなく明るさの度合いを詩的に表現しているのだとしたら

ぶどう酒色の牛も、すみれ色の羊も、緑のハチミツも…

現代人のぼくらからするとかなり違和感はありますが、

理屈としてはわからなくはない。

ちなみに赤が色名の最初にくるのは危険(血)・繁殖という単純社会において最重要なものに直結する色だからです。

 

このように物理的には同じものを見ていても、認識する基準が違う。

認識基準の違いは思考の違いにもつながります。

 

次回は言語のもつレンズ(フィルター)としての役割について。

 

今回の記事も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

ブログの趣旨がよくわからないという方はこちら↓をお読みください。 

 コンセプト

 

今まで知らなかったことに興味を持って頂けたなら嬉しいです。 

 

それでは! 

検索

検索

-言語
-, ,


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

言語なくして思考なし(3) 言語に束縛される現実

言霊という概念があります。 「ありがとう」「嬉しい」などポジティブなことを口にすると良いものを招き、 「辛い」「つまらない」などネガティブなことを口にすると悪いものを招くという日本独自の信仰。 &nb …

外国語の最適な学習方法は人によって違う

  外国語を勉強している時、 『全然覚えられん。つまらん。苦痛。』と思うことがあったら、それは勉強方法が自分の認知特性に合っていないからかも知れません。   目次1 情報の消化方法 …

言語なくして思考なし(2) 言語はレンズ

前回の続きです。 言語がもつレンズとしての役割についてお話します。   「言語の違いは世界観の違いでもある」という話を前回しました。 ではどの言語を用いているかによって、見える世界も変わるの …

運営者

 

運営者:YT
平成元年生まれ男。

4tトラックに左足を潰されしばらく体を動かせなくなる。

時間が余りまくったため、心理学・脳科学・世界史・日本史・宗教・神話・哲学・国際政治・地政学等を学ぶ。

2019年5月から8月にかけて中華人民共和国→モンゴル→ロシア→ポーランド→チェコ→スロバキア→ハンガリー→オーストリア→イタリア→ギリシャ→トルコをおもに陸づたいで放浪。

旅日記↓

https://note.mu/tyamadasan

現在は名古屋にいます。

連絡先:tyamadasan410@gmail.com